中隊長としての戦場体験と教訓⑥

支那事変間中隊長として百数十回の戦闘を体験、そこから得た「戦場心理」「戦場における指揮統率の秘訣」を学ぶ最適な書
            高杉善治(陸士37期)支那駐屯軍中隊長、歩兵22連隊大隊長等

■地形地物の利用

 日本軍の旧歩兵操典には、射撃と遮蔽のため些細な地物もこれを利用することを要求している一方、顕著な地物付近にい集しないように戒しめてあった。ところが実際戦場で弾の中を前進するときには、自然に顕著な地物の付近に集まるのが人情である。従って敵に対して、有利な目標となって損害を受けることが多いから特に注意すべきである。また敵から狙撃されていることを知ったときには、速かに位置を変換することが大切である。

 敵弾というものは、なかなか一発で命中するものではなく、身近に危険な弾が数発集まって来るものである。そのときには狙われているなと思い、速かに位置を変換するとよい。また戦闘間に遮蔽に適した地隙とか、提防のようなものがあるとそこに集まり停止するようになるのも人情である。これがまたすこぶる危険な場所であることを知らねばならない。敵は戦場の著名な地物に対しでは予め試射して置き、攻撃軍がその地物に集まったときに集中火をあびせ、大きな損害を与えようと待ちかまえていることが多い。

 前記山西のセッ口鎮の戦闘で、第一線大隊(私は第二線攻撃部隊にいた)が攻撃前進を開始し、ちょうど平素の演習のように勇敢に攻撃前進していた。すると敵前二〇〇米位のところに、敵陣地に平行するようになっている大きな地隙があった。攻撃部隊がこの地際に飛び込み、一息ついているなと見ていると敵迫撃砲の弾幕射撃が巡続数回行なわれた。地隙の内外は文字通り弾幕で覆われてしまった。どうなることかとかたづを呑んで見ていたが、果せるから死傷続出、前進は頓坐し、某中隊の如きは殆んど全滅に近く、無傷の者は数名しか残っていないということであった。あとで五師団の者に聞くと、この地隙は五師団がしばしば同じ方法でやられたところで「地獄谷」と呼んでいたところだったそうである。

 攻撃開始前に、隣接部隊(第五師団)の第一線幹部相互の連絡を密にし、事前に事情を知ることが必要であると思う。セッ日鎮の場合の事前連絡は一応したのだが、第五師団は再度の攻撃で死傷続出し、幹部の戦死も多く、これ以上の攻撃は不可能であるとし、駐屯軍の1コ連隊が来て突破できるならやってご覧なさいという態度だったので、地獄谷のことまでは言及しなかったのではないかと思われる。事前に中隊長以上全員が五師団の第一線に行き、連大隊長と会って連絡をしたのであるがそんな話は聞かなかった。当方としてもなぜ五師団がこんなに死傷者を出し、攻撃が不成功でおったかの原因を充分に検討することが不充分であったので、同じ失敗をくりかえすことになったのである。

 要するに戦場では、地形、地物の利用は最大限にすべきではあるが、目標となりやすいものの付近に行かぬことと、著名な地形地物の付近に長く留まらないことが極めて必要である。
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