米軍の性処理 ペトナム戦争とその後

アジアに撒き散らす尊敬できない米軍の足跡 
第二次大戦後の冷戦時代で、もっとも長く戦闘がつづいたのはフランスが主役の第一次(一九四五~五四)と、アメリカが主役になった第二次(一九六一~七五)のベトナム戦争であろう。
 戦争と性の問題がここでも登場するが、その態様は基本的に第二次大戦期と変らない。ベトナム軍は主として長期のゲリラ戦術に依存したので、仏米軍による女性へのレイプ、拷問、虐殺の事例が少なくない。
 フランス軍が持ちこんだのは、植民地車の伝統的慣習になっていた「移動慰安所」(Bordel Mobile de Campagne)であった。慰安婦は北アフリカ出身者が多く、存否をめぐる論議はたえなかったが、現地人女性は防諜の上で望ましくないという観点もあり最後までつづいた、とバーナード・フォールは書いている。この方式は、日本人・朝鮮人の慰安婦連れで転戦した中国大陸の日本軍と似ている。

 第二次ベトナム戦争ではピーク時の米兵は五十万を超えたが、九割近くが第一線以外の後方勤務であり、サイゴンを中心にベトナム人女性による売春産業は繁栄をきわめた。米軍の公式戦史はもちろん新聞も、この領域にふみこんだ記事はほとんど報道していない。幸いライケに駐屯した第一師団第三旅団(兵力四千)の駐屯キャンプにおける慰安所の実況について、スーザン・ブラウンミラーがピーター・アーネット記者(ビューリッツァー賞受賞者)に試みたヒアリングがあるので、次に要旨を紹介しよう。

 一九六六年頃までに、各師団のキャンプと周辺には「公認の軍用売春宿」(Official military brothels)が設置された。ライケでは鉄条網で囲まれたキャンプの内側に二棟の「リクリエーション・センター」があった。バーとバンド演奏所の他に六〇室の個室があり、そこで六〇人のベトナム人女性が住みこみで働らいていた。彼女たちは米兵の好みに合わせて、『プレイボーイ』のヌード写真を飾り、シリコン注射で胸を大きくしていた。性サービスは「手早く、要領よく本番だけ」(quick,straight and routine)がモットーで、一日に八人から十人をこなす。料金は五○○ピアストル(ニドル相当)で、女の手取りは二〇〇ピアストル、残りは経営者が取った。彼女たちを集めたのは地方のボスで、カネの一部は市長まで流れた。この方式で、米軍は「ディズニーランド」とも呼ばれた慰安所に手を汚していない形にしていたが、監督は旅団長で、ウエストモーランド司令官もペンタゴンも黙認していたのである。女たちは週ごとに軍医の検診を受け、安全を示す標札をぶらさげていたが、それでも米兵の性病感染率は千分比で二〇〇(一九六九年)に達していた。

 これで見ると、日本軍の慰安婦システムをそっくり模倣したのではないかと思われるほどすべてが酷似しているが、条件や環境が同じなら誰が考えても似た方式におちついただけのことかもしれないべトナム戦争末期には、この種の女性たちが三〇万~五〇万人をかぞえたとも言われる。戦争が終ると彼女たちの「更正」が問題になる。最初はリハビリ・キャンプヘ入れられるが、そのうち外人観光客用のダンサーヘ転出したとエンローは書いている。ベトナム戦を戦ったのは米軍だけではない。英軍も豪州軍もインドネシア軍も参戦しているが、最近になって注目を集めてきたのは米軍に次ぐ延べ三十一万人を派兵、五千人とも三万人ともされる混血児を残してきた韓国軍である

 長くタブー視されていた韓国の派兵と兵土たちに残したトラウマをとりあげた映画「ホワイト・バッジ」(一九九二)の公開がきっかけになったが、慰安婦問題に関わっている朝鮮人女性のなかには「韓国人はベトナム人殺しと女買いの悪いイメージを残したのです……ベトナム(に対して韓国は三十数年間、過去を清算しなかったのです)と言い出す人も出ている。
 ベトナム戦争にかぎらず、アジアの売春産業と米軍の基地経済は切っても切れぬ関係にあるようだ。日本(沖縄をふくむ)や韓国では米軍の駐留が米世紀前後の長さにわたるので、構造化していると言ってよいだろう。とくにアジア諸国の経済水準が低かった一九七〇年代以前は、ドルの威力が大きく、米軍は基地周辺に特権的な売春システムを築きあげ、各国政府はその下請的任務を引き受けさせられていた。関連の犯罪やトラブルが起きても、「治外法権」的な処理がまかり通っていた。

 その間に売春の態様はさま変りしていく。日本本土では売春防止法(一九五六)の成立をきっかけに女性たちの境遇は逐次改善されていったが、沖縄では一九七二年の本土復帰まで前借金など戦前の本土に近い搾取形態が残っていた。
 沖縄の地位が向上すると、こんどはより安価なフィリピンの女性が移入され、似たような役割を担った。韓国では、日本と同じように、米軍占頷下の一九四七年十一月、公娼制度(管理売春)を禁止する法令が出たが、やはり有名無実に終る。

 朝鮮戦争(一九五〇~五三)は、多くの未亡人と孤児を生みだした。一九五六年の韓国政府統計によると、全国で五十九万人もの戦争米亡人がいて、こうした母子家庭などの女性たちが、生活難のため米兵相手の売春婦となった。五七年の統計では、その数は四万人と推定されている。六二年には「倫落行為等防止法」が成立したが、これまた形だけのものに終る。
 朝鮮戦争後も、ひき続き米軍は韓国に駐留した。売春婦たちはドルを目あてに、米軍基地周辺の「特定地域」に群がった。「ヤンコンジュ」(洋公主と呼ばれる米兵相手の売春婦は見下される存在だが、最近でも二万七千人をかぞえるという。なかでも有名なのは三十八度線に近い東豆川基地で、ピーク時の六五〇〇人からは減ったが、最近でも六十数店に一五〇〇人の米兵用売春婦がひしめいている。強制検診制があり、女たちは安全カードが必携だというから、往年の日本軍慰安所と瓜二つである。

 しかし一九八二年にここを調査した臼杵敬子によると、慰安婦になった動機は「同棲した男の裏切」「結婚の破綻」「家族からの疎外」が多く、以前のような家庭の貧困という背景は少ないという。また米軍師団長が売春抑制を指令すると、互助会がストをうって米軍を屈伏させた話もある。有名なキーセン観光や「ジャパゆき」さんのたぐいも、一方ではフェミニストたちの猛反発を受けるが、売春に依存する経済構造から見れば、失業ないし外貨収入の減少を招き、貧困への逆戻りを強いる矛盾となる

 ペトナム戦争時に米兵の休息地として賑ったフィリピンやタイも米軍の引揚げで深刻な打撃を受けたが、カンボジア内戦を収拾するため、国連の平和維持部隊(UNTAC)が一九九二年に派遣されたときは、一時的に売春景気が復活した。
 しかし旧ユーゴスラビアの内戦(一九九二)で、「民族浄化」を名目とした組織的レイプや強制妊娠、慰安所の設置が、国際法廷による裁判にかけられようとしているように、「戦争と性」の関わり方は変貌を遂げようとしているように思われる。

 湾岸戦争(一九九〇~九一)では、職業的娼婦に代って兵士同士の性充足法が一般化したようである。 米大統領の諮問機関である「女性の軍務委員会」の調査によると、参戦した男女混成部隊の兵士四四四二人に対するアンケート調査で、六四%が「前線で異性兵士と何らかの性関係があった」と回答した。その頃、これまで中絶が事実上禁止されていた米軍関係の病院でも、中絶が実施出来るようになったという。
 佐藤和秀が「女性兵士を男性兵士は慰安婦にし、男性兵士を女性兵士は慰安夫にし・・・いくら戦線で遊んでも、軍が中絶で跡始末をつけてくれる」と書いたような情景となったわけだ。



(1)Bernard B.Fall,Street without Joy (Harrisburg,1961)pp.126-27
(2)Susan Brownmiller.Against Our Will(Simon and Schuster.1975)pp..94-95
(3) Cynthia Enloe.op.cit,dt.pp.33.34.
(4)『世界』一九九三年八月号の宮崎真子稿、朴根好『韓国の経済発展とベトナム戦争』(御茶の水書房、一九九三)参照。
(5)『世界』一九九七年四月号の富山妙子との対談における尹明淑発言。
(6)『女性の人権アジア法廷』(明石書店、一九九四)の高里鈴代論稿を参照、一九八九年調査では七三六〇人以上の売春婦がいた。
(7)尹真玉編『朝鮮人女性がみた〈慰安婦問題〉』の金富子論文、一七六ページ、申蕩秀前掲書、五五ページ。
(8)臼杵敬子『現代の慰安婦たち』(徳間書店、一九九二)に米軍基地周辺の売春事情が紹介されている。
(9)毎日新聞ニューヨーク電(一九九二年十月四日付)
(10)『正論』 一九九三年十二月号の佐藤和秀稿。

『慰安婦と戦場の性』新潮選書 秦 郁彦著から抜粋
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