日本人抑留者が遺したウズベキスタンとの友好の絆

国際派日本人の情報ファイルから引用
日本人抑留者が遺したウズベキスタンとの友好の絆

伊勢雅臣
■転送歓迎■ No.1373 ■ H19.12.03

 ウズベキスタン共和国の首都タシケントにある国立ナボイ劇
場は、レンガ造りの三階建て観客席1400の建物で、市中心
部の代表的建造物として威容を誇っている。

 この劇場正面には、「1945年から46年にかけて極東から強制
移住させられた数百人の日本人がこの劇場の建設に参加し、そ
の完成に貢献した」とウズベク語、日本語、英語で表記された
プレートが設置されている。

 ウズベキスタンには大戦後、ソ連によって約2万5千人の日
本人抑留者が移送され、水力発電所や運河、道路などの建設に
あたった。中山恭子元駐ウズベク大使は在任中に、いまも国民
に電気を供給している水力発電所の建設を仕切った元現場監督
に会った。この人物は、まじめに、そして懸命に汗を流してい
た日本人抑留者たちの思い出を涙ながらに語ったという。

 捕虜の境遇にあっても勤勉に働く日本人抑留者は、当時の地
元民に敬意を表された。現地の人は、「絶対に帰れる」と励ま
しながら、黒パンを握らせてくれたという。

 日本人抑留者が現地に残した遺産のシンボルが、約500人
の抑留者によって2年がかりで建設したナボイ劇場なのである。
レンガ製造から館内の装飾、彫刻まで抑留者が行った。

 66年の大地震でタシケント市内の多くの建造物が倒壊した際
も、この劇場はビクともせず、「日本人の建物は堅固だ」「日
本人の建築技術は高い」という評価が定着した。そのためか親
日感情が強い中央アジア諸国の中でもウズベキスタンの日本人
への好感度は飛び抜けている、という。

 1991年に旧ソ連から独立して新国家建設を進めるウズベキス
タンは、カリモフ大統領をはじめに日本の明治維新や戦後復興
をモデルとして「日本に見習え」を合言葉にしている。

 劇場前のプレートの表記についてはカリモフ大統領が、「決
して日本人捕虜と表記するな。日本とウズベキスタンは一度も
戦争していない」と厳命したそうである。

 2万人の抑留者のうち、800人以上が現地で死亡し、各地
の墓地に埋葬されたが、その多くは荒れ放題となった。しかし、
元抑留者たちが中心となって募金活動を行い、ウズベキスタン
政府の協力も得て、日本人墓地が整備された。また「日本に帰っ
てもう一度、花見がしたかった」と言い残して亡くなった抑留
者のために日本からサクラの苗木千三百本が送られた。整備の
発起人の一人、中山成彬衆院議員は「両国友好の証しになって
ほしい」と話している。

 過酷な環境の中で祖国帰還を夢見ながらも、勤勉に働いて、
ウズベキスタンと日本との友好の絆(きずな)を残してくれた
抑留者の御霊に感謝と追悼の意を捧げたい。

■リンク■
a. JOG(525) シベリア抑留
「ここにおれがいることを、日に一度、かならず思い出してく
れ」

■参考■
1. 産経新聞「小泉首相きょう中央アジア歴訪 ウズベクに息づく
『日本人伝説』、H18.08.28、東京朝刊、2頁
2. 産経新聞「元抑留者働きかけ ウズベクの日本人墓地再生 天
国の仲間へ熱き思い」、H18.07.31、東京朝刊、27頁
3. 産経新聞「ウズベキスタンの『国立ナボイ劇場』 建設に従事
元抑留兵の松永さん」、H10.05.06、東京夕刊、11頁
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