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【海峡を越えて 「朝のくに」ものがたり】 (24)

【海峡を越えて 「朝のくに」ものがたり】
(24)警察官の半数近くが朝鮮人だった 映画『望楼の決死隊』に見る実相 2018.6.23

 戦後の日本映画を代表する巨匠の一人、今井正(ただし)(1912~91年)がメガホンをとり、昭和18年に公開された映画『望楼の決死隊』(東宝)は、10年ごろの満州国(現中国東北部)との国境に近い朝鮮北部の村を舞台にしている。“永遠の処女”原節子(1920~2015年)が、匪賊(ひぞく)と対決する国境警察隊所長の若妻役を演じ、戦闘シーンで拳銃をぶっ放す派手なアクションが話題になった。
 撮影当時、国境にある朝鮮・咸鏡北道知事を務めていた古川兼秀(かねひで)(1901~74年)は、現地ロケにやってきた原など、撮影隊に会ったことを、よく家族に話していたという。
 映画のストーリーを簡単に紹介しよう。朝満国境を流れる鴨緑江や豆満江が凍結する厳冬期には、満州から匪賊が河を渡って朝鮮へ攻撃を仕掛けてくる。
 匪賊には馬賊、土匪、宗(教)匪などがあるが、映画に登場するのは、共産主義者勢力による「共匪」。北朝鮮の初代最高権力者となる金日成も参加していた「抗日パルチザン」と称する武装ゲリラ集団である。朝鮮人住民とともに土地を警備する国境警察隊は、厳寒のなか不眠不休で任務にあたり、共匪との激闘で殉職者を出しながら、ついには村を守り抜く…。
 映画の中で、朝鮮人の住民の心情は、日本側にある。朝鮮総督府後援の作品だから、多少のプロパガンダ色はあるものの、実感情に近いだろう。共匪の「抗日」宣伝に共感する住民もなくはなかったが、多くの朝鮮人住民は、民間人への襲撃、放火、略奪、誘拐…と非道の限りを尽くす共匪を恐れ、嫌っていた。
 映画の国境警察隊には朝鮮人警察官もおり、共匪側の凶弾に倒れ殉職する。日本人警察官は悔しさをにじませ、仲間の仇(かたき)をとるべく銃弾が飛び交う最前線に飛び出してゆく。古川は、北部の平安北道や黄海道で警察部長(現在の県警本部長に相当)を務めた経験があり、匪賊掃討の陣頭指揮もとっていたから、映画には、感慨深いものがあったに違いない。
■日本時代に刷新改善
 朝鮮で、近代的な警察制度が整備されたのは日本統治時代である。
 『25年 朝鮮は何を得たか?』(昭和11年、京城日報社編)にこうあった。《韓国(大韓帝国)時代における警察制度は、名あるも実なく、常に権門の手足となり…弊害百出混沌(こんとん)たる状態であった。(略)その後露、仏などによる顧問を聘(へい)したが、徒(いたずら)に政争の爪牙たるに過(す)ぎなかった。明治37年帝国政府(日本)より推薦せる警察顧問によって刷新改善を図り、ここに初めてその体をなすに至った》
 同書によれば、明治43年に107だった警察署は、昭和8年に251に。駐在所は、269→2334▽警察官数は、5694人→1万9228人(いずれも前記期間比較)と急増している。注目すべきは、朝鮮人警察官の人数が、全体の「4割強」(昭和8年)を占めていることだ。総督府の役人の数も約半数を朝鮮人が占めている。彼らの目を盗んで)、同胞の少女を慰安婦として無理やり連れ去ることなどまず、できなかっただろう。
 キャリア官僚として朝鮮総督府に入った古川は、警察畑が長かった。主に警備・公安畑で活躍し、道の警察部長のほか、政治犯や防諜を担当する総督府警務局の保安課長、メディアの検閲などを担当する図書課長も務めている。
 昭和13年発行の『ヂャーナリズム時代の部隊の戦士』〈話題の人〉に、図書課長時代の古川の人物評が載っていた。《血の気が多い…総督府内きっての革新派…次のイスは道知事か警務局長か…》と。
 古川は、朝鮮人の登用に積極的な官僚だった。次男の武郎(たけお)(80)のもとには、平成元年に古川が重用した朝鮮人警察官が亡くなったとき、息子から届いたお礼の手紙が残っている。「父の日記には、故古川殿と友子様(さま)(古川の妻)の数々の思い出があふれていました。1934年に古川殿とお付き合いを始めて、親子関係よりももっと深い思いやりであった、と書かれていました…」
一方、古川が残した一文には、この朝鮮人警察官が一度、酒の上での不祥事を起こしたものの「『見どころがある男だ』として罪一等を減じた…果たして、拳銃強盗事件の捜査で凶弾を左ほほに受けながらも犯人を逮捕した」というエピソードが綴(つづ)られている。
 古川と朝鮮人部下との交流は、終戦後に、古川の家族が日本へ引き揚げるときまで続く。
 ■日朝住民の交流描く
 映画『望楼の決死隊』は戦後、軍国主義の国策映画として批判も浴びた。戦時下という時代もあったろうが、その後は、左翼色の強い監督というイメージが強まってゆく今井にとっては、確かに異色の作品かもしれない。
 ただ、この映画の見どころは、匪賊と国境警察隊の派手な戦闘アクションだけではない。むしろ私には、雄大な朝鮮北部の大自然や、当時の朝鮮人の生活、風俗、日本人と朝鮮人との交流の“息づかい”といったものを丹念に描いたシーンの方が興味深い。
 雪と氷に包まれた急峻(きゅうしゅん)な山を見れば、「こんな奥深い辺鄙(へんぴ)な地に日本人はよく巨大な水力発電所などを造ったな」と感心する。凍った河を、すいすいとスケートで滑ってゆく朝鮮人住民らのシーンでは、ここが今なお、中朝混在の地であり、密貿易や脱北者が逃げるルートになっていることがよく分かる。原節子が隣家の朝鮮人の奥さんのお産を手伝いにいったり、殉職した朝鮮人警察官の遺影に日本人の同僚がお雑煮を供えたりするところなどは心温まる場面だ。
 2つの民族は反目しあっていたのではない。映画に登場するような国境警察隊や日朝の警察官の不断の努力によって、朝鮮の治安は改善され、人口は約2倍に増加し、農業・商工業の飛躍的発展を見たのである。=敬称略、土曜掲載(文化部編集委員 喜多由浩)
映画「望楼の決死隊」に出演した原節子
朝鮮時代の古川兼秀
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