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【海峡を越えて 「朝のくに」ものがたり】(19)

【海峡を越えて 「朝のくに」ものがたり】(19)
イムジン河と北の国歌 「日本人は統一に反対」の嘘 2018.5.19

 「日本人はわれわれの統一に反対なんだろう」
 「えっ?」
 「だって、(南北統一で)強力なライバルが誕生すると困るじゃないか」
 韓国に住んでいるとき、よく、こんな話を韓国人から聞かされた。
 先月末に行われた約10年ぶりの南北首脳会談。北朝鮮の「悪行」を忘れたかのような友好ムードを演出し、今度こそ悲願の南北統一が実現する、ノーベル平和賞ではないか、と世界中、大盛り上がりである。
 ところが、ネット上では相変わらず、韓国から「日本は統一に反対!」の声が飛び交っている。曰(いわ)く、「核・ミサイルを持った統一朝鮮が怖い(非核化するのでは?)」「南北が敵対していた方が都合がいい」「統一のコストを日本が負担させられる」(これはあるかも)。世論調査などを見ていると、むしろ韓国の若い世代の方が統一に慎重な気がするのだが…。
もちろん、北朝鮮主導の赤化統一や在韓米軍撤退論、カネをめぐる理不尽な要求には断固反対すべきだ。ただ、基本的に統一によって東アジアが安定するのは日本の安全保障上も好ましい事態だし、北が“開かれた国”となって拉致被害者を帰し、改革開放経済の道を歩むのならば、多くの日本人は反対しないだろう。あるいは、さほど関心がないか、だ。
 心情的な面もある。南北分断が、米ソ(当時)の戦後戦略によって生まれたものとはいえ、日本が戦争に負けなければ、その後、分断のない形での独立になったかもしれない。分断の悲劇をわがことのように痛み、大衆運動や文化・芸術に込めてきた日本人はこれまでも星の数ほどいた。
■分断の悲劇痛む若者
 『イムジン河(がわ)』という名曲がある。半世紀前の昭和43(1968)年2月、加藤和彦、きたやまおさむ、はしだのりひこ、の「ザ・フォーク・クルセダーズ」がレコードを出そうとしたが、朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)の抗議で発売中止になった歌だ。
 イムジン河(臨津江)は北緯38度線を横切って「北」から「南」へ流れる川。その歌詞は、川の清流や水鳥に、引き裂かれた民衆の悲しみを託し、いつの日にか…と統一を願う内容だ。
 3番までの歌詞のうち、1番は、メンバーの友人だった松山猛(たけし)(71)が京都の朝鮮学校に通う友人の在日コリアンから教わったもの。2、3番は松山のオリジナルである。多感な若者がまさしく、わがことのように「分断の悲劇を思って」書いたのだ。
 ではなぜ、朝鮮総連が抗議したのか?
 この歌はもともと、北朝鮮で1957年につくられた。題名は「リムジン江(ガン)」(臨津江の北朝鮮風発音)。歌詞は、朴世永(パク・セヨン)(1902~89年)という南から北へ渡った有名な詩人が書いた。彼にとっては、(分断のために)今は帰ることができない懐かしい「故郷(南)」を思う歌だ。
だが、フォーク・クルセダーズのメンバーやレコード会社は“その出自”を詳しく知らず、レコード発売の際に「朝鮮民謡」とクレジットした。それを知った総連側が作詞作曲者名と北朝鮮の正式国名の2つをクレジットすることを求めて抗議。政治問題化を懸念したレコード会社と親会社の家電メーカーが発売中止を決めたのが真相である。
 朴が書いたオリジナルの歌詞は2番までだが、実は南北統一を願う「幻の3番」があったという。日本の「イムジン河」も長いオクラ入りから2000年代に復活。今や“アジアのイマジン”と呼ばれ、日朝韓の多くのアーティストによって歌われている。
■北朝鮮への巨額の“貸し”
 この歌の作詞者・朴世永が、北朝鮮の国歌である「愛国歌」(1947年、作曲は金元均)の作者でもあることは日本ではあまり知られていない。
 朴は、日本統治時代の京城(現・韓国ソウル)で育ち、左派色が強い「朝鮮プロレタリア芸術家同盟」に参加、終戦後の46年に越北し、北朝鮮の文学家同盟書記長などの要職についた大物作家だ。「愛国歌」や「リムジン江」のほか、国歌の座を争った「輝く祖国」「椿の花」など、作詞した歌は数え切れない。
 「リムジン江」だけでなく、朴の書く歌詞には、南の故郷や残してきた母親への強い思いがにじんでいる。同曲の作曲者である高宗煥(コ・ジョンファン)(1930~2002年)もまた南から北へ渡った人だった。その制作秘話を「(朴世永先生と)いつしか故郷(南)の話になり、残してきた家族への思いを、リムジン江に託して歌を作ろうということになったのです」と関係者に打ち明けている。
朴が書いた北の国歌には、時代が早い(終戦後2年)こともあって、北の歌に多い金一族を賛美するような内容にはなっていない。朝鮮の美しい山河や歴史をたたえる歌詞だ。
 韓国にも「国歌」と位置づけられる別の「愛国歌」があり、南北統一の暁には、韓国とともに、新たな「国歌」を作ろうと願う人たちがいることは、以前書いた通りである。
 北朝鮮が過去の悪行をわび、本当に非核化を行うのであれば、南北統一に反対する理由などない。あるとすれば、統一を望まない勢力によるためにするウソであろう。「リムジン江」を書いた泉下の朴世永も、「イムジン河」を歌う多くのアーティストたちも同じ思いに違いない。
 ただし、“バスに乗り遅れるな”とばかりに日朝首脳会談や国交正常化を急がせる動きは要警戒だ。拉致問題など北朝鮮に解決してもらわねばならない課題が山積していることに加えて、日本統治時代などに巨額な“貸し”がある。そのことは次週に書きたい。=敬称略、土曜掲載(文化部編集委員 喜多由浩)
フォーク・クルセイダーズ
朴世永
終戦時の朝鮮と臨津江
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