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【海峡を越えて 「朝のくに」ものがたり】 (9)

【海峡を越えて 「朝のくに」ものがたり】
(9)日本がつぎ込んだ巨額資金 「痛い目」を何度見れば… 2018.3.11
 競技よりも当初は「南北」による政治ショーの方に注目が集まった平昌五輪。「行かぬ」と、一旦は決めたはずの日本首相が開会式に出席したのは、アメリカの圧力か、与党内の一部の意見に妥協した結果か、は知らない。だが、案の定というべきか。韓国大統領との首脳会談で改めて慰安婦問題の合意履行を迫ったものの、相手側は“馬の耳に念仏”のごとし。さりとて、日本政府が拠出した10億円を返す気配もない…。
 国同士の約束事をいとも簡単にホゴにしてしまう不誠実な態度に、多くの日本人は怒り心頭だが、日本と朝鮮半島の「お金」をめぐる、これまでの歴史を振り返れば、相手側の対応も別段、驚くには当たらない。
 今さら言うまでもないが、そもそも「戦後補償」なる問題は、昭和40年の日韓請求権・経済協力協定によって、すべて「解決済み」である。日本は、5億ドルという当時の韓国国家予算を上回る巨額の資金供与(有償・無償)を約束し、お互いの請求権問題は、完全かつ最終的に解決していたからだ。
 つまりこのとき、韓国側だけが、請求権を放棄したのではなくて、日本も、公的資産のみならず、朝鮮の地で個人が築き上げた私的財産まで、すべて最終的に放棄させられたことを忘れてはならない。
韓国が、日本から得た資金やベトナム戦争に韓国軍を派兵する“見返り”としてのアメリカからの援助などによって、1960年代後半以降、「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を成し遂げたのはよく知られている通りだ。
 だが、韓国側はその後、司法も加わって、「個人の請求権は消滅していない」とか、「(国交正常化した日韓基本条約の交渉時に)慰安婦などの問題は明らかになっていなかった」などと主張し、いっこうに矛を収めようとしない。日本政府側の「詰めの甘さ」も相まって、ウンザリするようなマネーバトルが繰り返されてきたのである。
 実は、「お金」をめぐるゴタゴタは、日本が朝鮮に関わりはじめたときからすでに起きていた。
▲内地より安かった税金
 日韓併合(明治43=1910年)前の、大韓帝国時代の財政は、中央・地方とも予算が組めないほどの破綻状態。このため日本政府は、それまでの借金を“棒引き”にした上、毎年の歳入不足分を、保護国時代は「立替(たてかえ)金」、併合後は「補充金」などとして、一般会計から補填(ほてん)し、帳尻を合わせねばならなかった。朝鮮開発のインフラ整備の原資となった公債の多くを引き受けたのもまた、日本(金融機関など)である。
いったいどれだけの額を日本が負担してきたか。朝鮮総督府財務局長を務めた水田直昌監修の本『総督府時代の財政』から、昭和8(1933)年度の「朝鮮総督府特別会計予算」の例を挙げてみたい。
 歳入総額は、約2億3200万円(現価で4兆6千億円前後)。
 このうち、最も多いのが、官業および官有財産による収入だ。鉄道収入約6500万円▽専売収入約4千万円▽通信収入約1500万円-などで、歳入総額の約55%を占めている。一方、租税収入は、約5千万円で、全体の2割強でしかない。通例、先進国では、全収入の半分以上を租税が占めるケースが多いのだが、当時の朝鮮の経済力は、それだけの税負担に耐えうるまでに発達していなかった。
 時代劇では、悪辣(あくらつ)な領主が高い年貢をかけて農民を苦しめる、と相場が決まっている。だが、統治者・日本はこうした状況を鑑みて、朝鮮の税金を基本的に内地よりも低めに設定せざるを得なかった。昭和17年度朝鮮総督府予算に就(つ)いてという講演の中で、水田はこう語っている。《(内地の)所得に対する税負担の割合は約1割4、5分。(朝鮮の)割合は1割に満たないのであります》
いったいどれだけの額を日本が負担してきたか。朝鮮総督府財務局長を務めた水田直昌監修の本『総督府時代の財政』から、昭和8(1933)年度の「朝鮮総督府特別会計予算」の例を挙げてみたい。
 歳入総額は、約2億3200万円(現価で4兆6千億円前後)。
 このうち、最も多いのが、官業および官有財産による収入だ。鉄道収入約6500万円▽専売収入約4千万円▽通信収入約1500万円-などで、歳入総額の約55%を占めている。一方、租税収入は、約5千万円で、全体の2割強でしかない。通例、先進国では、全収入の半分以上を租税が占めるケースが多いのだが、当時の朝鮮の経済力は、それだけの税負担に耐えうるまでに発達していなかった。
 時代劇では、悪辣(あくらつ)な領主が高い年貢をかけて農民を苦しめる、と相場が決まっている。だが、統治者・日本はこうした状況を鑑みて、朝鮮の税金を基本的に内地よりも低めに設定せざるを得なかった。昭和17年度朝鮮総督府予算に就(つ)いてという講演の中で、水田はこう語っている。《(内地の)所得に対する税負担の割合は約1割4、5分。(朝鮮の)割合は1割に満たないのであります》
税金が取れず、歳入が不足する分を、日本の一般会計から補っていたのが「補充金」だ。8年度は、1285万円(同2600億円前後)で、歳入総額の5・5%。この補充金は、大正8年にいったんは中止されたが、すぐに財政が立ち行かなくなって翌年には復活。終戦までの総額は、約4億2020万円(同8兆4千億円前後)の巨額に上っている。
 そして、昭和8年度の公債が、3300万円(歳入総額の14・2%)。主に日本人が購入した公債によって朝鮮の鉄道、道路、港湾、電信電話などが、着々と整備されていった。
▲17兆円の日本の資産
 前述書は、こう結論づけている。《昭和20年8月15日、朝鮮が独立国として立ち上がった時(とき)の日本内地と朝鮮との貸借対照表は、政府、民間を通じ資金において日本からの多額の流入、すなわち朝鮮の「借」が計上される状態にあったという事実は、植民地搾取という抽象的概念の当たらないことを示している》と。
 日本が終戦時に朝鮮に残した総資産は、実に計約17兆円に上るという試算もある。韓国が理不尽な主張を繰り返すのであれば、「日本人の資産を返せ」と言い返すぐらいの気迫がなければ永遠に解決しないだろう。=敬称略、日曜掲載(文化部編集委員 喜多由浩)
日本統治下の朝鮮
日本政府からの補充金
日韓首脳
総督府の特別会計
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