なぜブラジルの国土は大きいのか、 その成り立ちは?

なぜブラジルの国土は大きいのか?   
【南米に横たわる、巨大国家の秘密】 「ワケありな国境 」  彩図社 著 武田知弘 

 世界第5位の面積を持つブラジル。
 ブラジルは、南米の中でも特異な国である。南米の地図を見ると、東(右側)のどてっ腹にブラジルが大きく横だわっているのがわかる。ブラジルだけがひときわ大きい。その面積は南米の半分を占めるほどだ。
 また南米のほとんどの諸国は、主にスペイン語を話すが、ブラジルだけはポルトガル語である。
 南米の中で、なぜブラジルだけがこんなに大きな国土を持つのか?
 なぜブラジルだけがポルトガル語を話すのか?
 そこには、ヨーロッパの中世から近代にかけての複雑な事情が絡んでいる。
 西欧諸国が南米に進出したのは、あの有名なコロンブスがアメリカ大陸に到着してからのことである。
 コロンブスは、もともとジェノバ出身のイタリア人。だが、スペイン女王イサベルの援助を受け、インド航路開拓の航海に出発した。
 結局 コロンブスはインド航路を開拓することができなかった。だが代わりにアメリカ大陸発見の報をもたらす。足がかりを得たスペインは、いち早くアメリカ大陸に進出。
スペインは一躍、大航海時代の主役に躍り出たのである。
 そこに待ったをかけだのが、ポルトガルだった。
 ポルトガルは、スペインと並び立つ大航海時代の雄。アメリカがスペインに独り占めされるのは、面白くない。
 そこで、ローマ教皇に働きかけ、「アメリカ大陸は、スペインとポルトガルの2国で半分ずつ分け合いなさい」というトリデシャス条約という命令を出させたのだ。
 アメリカ大陸の先住民こそいい面の皮である。
 ローマ教皇の一存で、先住民が住んでいる土地を勝手に分割してしまうのだ。聖職者にあるまじき言動のように思われるが、当時のキリスト教徒にとっては、キリスト教を広めることが責務だったので、さして不道徳なこととも思っていなかったのである。
 さて大航海時代は隆盛を誇ったスペイン、ポルトガルだが、近代になってからはだんだんふるわなくなってきた。特に産業革命以降は、完全にイギリス、フランスにおくれを取るようになっていった。
 スペイン、ポルトガルは、冒険心に富んだ国民性。未開の地を発見することにかけては右に出るものはなかったが、未開の地を組織的に開発したり、富を生み出すための細かいシステムを作る作業には向かなかった。
 そのうち、スペインとポルトガルはみるみる凋落し、ポルトガルなどは一時期、イギリスの保護国同然の身分にまで落ち込んだこともあった。
 ヨーロッパでのその力関係は、アメリカ大陸にもそのまま持ち込まれた。
 18世紀、まず北アメリカでイギリスとフランスによる植民地の奪い合いが起こる。
 メキシコだけがなんとかスペインの領土として持ちこたえていたが、19世紀までには他の地域はほぼイギリスとフランスの手に渡ってしまった。
 そして時代は下り19世紀初頭、ヨーロッパでは大変な戦乱が起きる。
 ナポレオンの登場である。
 1807年、ナポレオンはポルトガルに侵攻。ポルトガルの王室は、まだ植民地として持っていた、南米のブラジルに逃げ込んだ。(イギリスにより半ば強制的に疎開させられた)。
 ポルトガル王室は、ナポレオンが敗れる1821年までブラジルに滞在した。そして国王ジョアン6世はポルトガルに戻るとき、皇太子のドン・ペドロを摂政としてブラジルに残していった。
 この皇太子ドン・ペドロが、翌1822年、ブラジルを独立させてしまうのである。この要因は、ドン・ペドロがポルトガルの植民地政策に反発した、ともいわれているが、イギリスの入れ知恵もあったようだ。イギリスは、ブラジルをポルトガルから切り離し、利権を得ようとしたのである。
 ポルトガルとしても、皇太子の国に攻め込むわけにはいかないし、もはや遠くの南米に軍を派遣する力もない。このためブラジルは大した戦乱もなく独立できたわけである。その後、ブラジルは、1889年の革命で共和制に移行している。
 ブラジルは、植民地から共和制国家になるまで手際よくソフトランディングしたために、分裂せずにあのような広大な国ができたといえる。それこそが、あの南米にあって、広大な国土を持つ秘密なのである。
 一方、スペインの植民地はそうはいかなかった。
 南米のスペインの植民地でも、スペインが力を失っていくにしたがって、独立の機運が高まっていった。しかしスペインの植民地では、各地にクリオーリョと呼ばれるボスがいて、それぞれが独立を目指して闘争をした。
 だから、植民地全体が一つの国を作るようなことにはならず、三々五々独立することになった。その結果、南米のスペイン側の植民地は、細切れ状態になり多くの国が生まれたのである。


※正式名称は「ブラジル連邦共和国」。
南米随一の領土を誇り、ロシアを除くヨーロッパ全土よりも大きい。
近年は経済も好調で、新興経済地域「BRICS」の一角を占める。
人口‥約1・9億人
面積‥約851万㎢
首都‥ブラジリア
言語‥ポルトガル語
通貨‥レアル

※「トリデシャス条約」
1949年にスペインとポルトガルの間で締結された「トリデシャス条約」のこと。ローマ教皇アレクサンドル6世が承認した同条約では、ヨーロッパ以外の地球上の大地は北緯46度36分を境に両国で分割することに決められた。

※スペインとポルトガルの凋落
代わって世界史の主役の座についたのが、産業革命を成し遂げたイギリスと、ナポレオン率いるフランスだった。とくに本国が小さいポルトガルの凋落ぶりは甚だしく、植民地が奪われるたびに国力が縮んでいった。

※クリオーリョ
南米生まれのスペイン系住民。富と力を持っていた彼らは本国スペインと対立、独立運動の中心となったが、独立後も国の中心に居座ったため、南米諸国の住民の貧富の差を生んだといわれている。
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