朝鮮大学校60年の闇 第3部(上・中・下)

【朝鮮大学校60年の闇 第3部(上・中・下)】2016.12.8~10
◆「美濃部知事の英断」誇示 認可見直しに危機感…男女交際の制限も緩和して学生確保に躍起

 「KO KO(ここ)からたしかな未来へ」。11月13日、秋晴れの日曜日。東京都小平市の朝鮮大学校で、創立60周年記念の学園祭が開かれた。掲げたテーマの2つの「KO」は、地元の「小平市」と「コリアユニバシティ」の頭文字から取ったものだ。
 朝大正門脇に警察車両が横付けされたが、朝大関係者の目は光っていない。普段は出入りの監視が厳しい朝大も、この日ばかりはチェックが行き届かないようだ。朝大関係者によると、校舎内は若者や家族連れでにぎわい、焼き肉やビビンバの模擬店が並んだ。民族舞踊や在校生バンドのステージなどのイベントも繰り広げられた。
 これだけなら、日本の大学の学園祭の風景と変わらない。だが、会場内には、お祭りムードにはそぐわない異質な一角があった。60周年記念特別展と銘打った政治宣伝のコーナーだ。
 「ヘイトスピーチ」「民族教育弾圧」「朝鮮学校補助金支給問題」などのパネルを展示。参加者に配布されたパンフレットでは、昭和43年に都知事の美濃部亮吉(りょうきち)(当時)が朝大を各種学校として認可した正当性がアピールされ、「美濃部東京都知事の英断」の大見出しが躍る。
 また、朝大の認可を「朝日友好親善の貴重な結実」とうたい、2千人以上の日本の著名な学者や文化人が当時、認可を求める署名運動に参加した-ともつづっていた。

実は、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)と朝大は最近、こうした主張を懸命に訴えている。現在の知事、小池百合子の都政下で、朝大の認可見直し機運が高まっていることへの強い危機感の表れだ。
 ただ、正当性をアピールする一方で、核・ミサイルで国際社会に恫喝(どうかつ)を繰り返し、反日・反米を訴える北朝鮮の金(キム)正恩(ジョンウン)朝鮮労働党委員長ら一族へ絶対忠誠を誓わせる教育は、現在も何ら変わっていない。実際、学園祭で盛り上がる朝大校舎の片隅にある施錠された部屋では、金一族の肖像画が恭しく飾られていた。これでは学園祭で掲げたスローガン「友好親善」もむなしく響くばかりだ。
□  ■  □
 
 「朝大創立60周年の今年は民族教育跳躍の年だ」
 「(来年4月の入校者は)何としても200人の目標を達成せよ」
 今年2月、朝鮮総連本部が国内で教育合同会議を開いた。朝大は未来の朝鮮総連幹部を輩出する教育機関だ。組織維持のため人材確保が最優先課題となっているため、朝鮮総連本部幹部らは、集まった地方本部・商工会幹部を前に強い口調で指示した。だが、出席者の表情はさえない。

無理もない。日本の高校に相当する全国の朝鮮高級学校から日本の大学へ進学が容易になった昨今、金一族へ忠誠を誓う思想教育を変えず就職も困難な朝大を希望する在校生が集まらない。200人は高いハードルだった。
 朝大学園祭で配布されたパンフレットを読むと、今年4月現在の在校生数は「約600人」とある。約20年前の最盛期の3分の1ほどだ。8学部と研究院などを擁する大学の規模としては少なすぎる。
 とりわけ、来春の進学希望者約500人を対象にした今夏の全国朝高アンケート結果は、朝大関係者にショックを与えた。朝大進学希望者は全体の2割、約100人で、朝鮮総連が掲げた目標の200人の半数にしかならないからだ。
 入校者の減少はそのまま、朝大の財政危機につながる。教職員は現在、最盛期の半数以下で給与は漸減中だ。寄付金も激減した。学園祭のテーマ「たしかな未来」を見据えるのは困難だ。
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 危機感を強めた朝鮮総連は朝大入校者確保に向け、硬軟を絡めた一大キャンペーンに乗り出す。「軟」では卒業後の弁護士や税理士への道筋やサッカーやラグビーなどの強豪クラブの魅力を前面に出して入学者を誘うソフト戦略に打って出た。朝大のスカウトが今年7月、全国各地の朝高のサッカー、ラグビー両部の合宿地に赴き、部員に朝大進学を勧めた。

また、以前は厳しかった男女交際やアルバイト、全寮制の在校生の外出制限は近年、大幅に緩和された。ネットの就職サイトに自由に登録できるようになり、日本の大学院への進学者も増えてきた。日本の大学では当然のように享受できるライフスタイルを朝大だけが無視することはできず、ソフト化路線を選択せざるを得なかったのだ。
 それでも、30代の朝大出身男性は「卒業後に強制される朝鮮総連傘下組織に就職しても、まともに給料は払われなかった。いくらソフト化しても、朝大へ行きたがる希望者が少ないのは仕方のないことだ」と顔を曇らせた。
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 「硬」の面での締め付けも怠りない。朝高・朝大在校生など若年層の訪朝を積極的に推し進めているのだ。朝高は修学旅行として、朝大では祖国短期研修の名目で訪朝する。朝大の場合、訪朝は長ければ数カ月にも及ぶ。特に祖国研修は思想教育の総仕上げで、感動を呼ぶさまざまな“仕掛け”が用意されている。
 「少女だけの高射砲部隊を訪問したんです。けなげな姿を見て、僕も祖国(北朝鮮)を守るんだ、という気にさせられた」
 「教育実習先の子供が純粋なんですよ。貧しいけれど社会主義建設のために頑張っているんです。私も『祖国はここなんだ』と泣いてしまった。金一族崇拝とは次元が違う感覚でした」
 祖国研修を終えた朝大出身者が、自らの情動を介した思想教育の魅力を目を輝かせて熱心に語っていたのが印象的だった。
 ソフト化路線で入校者をかき集める一方、訪朝を通じて北朝鮮に盲従する姿勢や思想をたたき込む-。朝大は泥縄式ともいえる二極策で延命を画策している。
 (敬称略)

  在校生の減少に歯止めがかからない朝大。生き残りをかけて、もがく実像に迫る

◆朝鮮総連と一体…不適正運営、是正できぬ都

 東京都は昭和43年、知事の美濃部亮吉(りょうきち)の下で政府の慎重姿勢を押し切り、半ば強引な形で朝鮮大学校(東京都小平市)を各種学校として認可した。朝大に各種税制優遇措置が施される発端となった。
 認可した都は、朝大の運営に目を光らせなくてはならない立場であるにもかかわらず、実は不適正な運営を放置している。朝大の財産管理の問題点を把握しながらも3年以上、ずっと是正できずにいるのだ。朝大が都を軽んじているともいえる。
 きっかけは、都が平成25年11月にまとめた「朝鮮学校調査報告書」だ。
 都内で朝大を設置・運営する東京朝鮮学園の教育や財務実態を調べ上げ、学園が「朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)と密接な関係にあり、教育内容や学校運営について強い影響を受ける状況にある」と認定。
 さらに「朝鮮総連関係団体に経済的便宜を図るなど、朝鮮学園は準学校法人として不適正な財産の管理・運用を行っている」と断じた。つまり、朝鮮総連のために朝大の資産を使うことを「不適正」と認定したのだ。
 都は、学園が小平市にある朝大のグラウンドを朝鮮総連関連企業の債務のため、担保に入れていたことを調査中の同年9月ごろに把握。慌てた都は、すぐに学園側に抵当権の抹消を求めた。調査途中での都による是正要請は、調査報告書で朝大側が問題点を指摘されないようにするための「事前の配慮」と受け取られかねない。

ただ、こうした都の配慮を無視するかのように学園は25~26年、グラウンドを分割して相次ぎ売却。売却益のほとんどを関連企業の債務返済のため活用してしまった。
 学園は都の是正要請を無視し、関連企業の借金を肩代わりしたことになる。朝鮮総連と朝大が一心同体なのは明白だった。
 27年11月、関連企業から朝大への返済を促したい都担当者と、学園の幹部が都庁内でひざを交えた。
 「この状況は是正されなくてはならない」
 「情報があれば都に提供する」
 のれんに腕押しだ。以来、是正されないまま1年が経過し、都が有効打を放てないでいる。
□  ■  □
 
 朝大の用地取得の経緯についても疑問がつきまとう。
 産経新聞が都から入手した『朝鮮大学校設置認可申請書』(昭和42年8月25日付、申請者・東京朝鮮学園)に、朝大が建つ小平市のキャンパス(約5万5千平方メートル)の土地が、そもそも共立産業が地主から譲り受けたものだったとする登記記録が見つかった。
 当時の地主らは共立産業が「トランジスタラジオ工場を建設する」と言いはやしたので、土地を売った。だが、結局、共立産業はダミー会社にすぎず、完成した建物に北朝鮮国旗が翻っているのを見て住民は仰天した。でたらめだったのだ。

だまし討ちともみなされる手法で土地取得にこぎ着けた朝大では平成11年、在校生の女性暴行容疑で、新潟県警によって教育現場にはあるまじき家宅捜索が行われている。さらに今年2月、同大の元経営学部副学部長が詐欺容疑で警視庁公安部に逮捕された。公安当局は北朝鮮から直接指令を受けた元副学部長が韓国での工作活動に関わったとみて事件化に踏み切ったが、東京地検は起訴猶予とした。
 たとえ、多くの在校生が日本人との友好親善を願っても、北朝鮮と朝鮮総連に盲従していれば近隣住民の目には“物騒な隣人”としか映らないだろう。都は朝大の認可の適否を早急に検証する必要性に迫られている。(敬称略)

◆エリートこそ独善に嫌気、衰退に歯止めかからず…「朝鮮総連と手を切らねば」
 「英語を使う仕事がしたい。世界へ出たいんです」

 「『したい』と『しなければならない』は違う。個人の夢よりも在日朝鮮人全体のことを考えろ」

 日本の高校に相当する朝鮮高級学校に朝鮮大学校在校生が泊まり込みで訪問する恒例の「進路指導合宿」の一幕だ。優秀な朝高生に目を付け、朝大進学を熱心に働きかけるのが目的だ。

 進路指導を受けた朝大人文系学部出身の30代の男性は「生徒同士で相互批判させて、最後は『朝大へ行く』と言わざるを得ないように仕向けてゆく。今思うと怖いことでした」と振り返る。

 男性は朝大で在日本朝鮮青年同盟(朝青)朝大委員会で役員も務め、エリートコースを歩んだ。朝青は、在校生ら約1万人が会員の青年組織で、金正恩朝鮮労働党委員長崇拝の思想教育が施される。結局、男性は日本の大学院進学を希望したが、説得されて在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)傘下の在日本朝鮮留学生同盟(留学同)の専従職員に甘んじた。

 留学同は日本の大学に在籍する在日朝鮮人を誘い、親北思想に染めていくのが仕事だ。しかし、「朝鮮文化を伝える活動は楽しかった。でも、僕には金一族の偉大性はどうしても教えられなかった」と本音を漏らす。

一方、政経学部出身の40代の男性は朝高時代、パチンコの不正操作で荒稼ぎし、けんかや飲酒に明け暮れた。ただ、学校の成績は抜群に良かった。進路指導が始まる高2の終わり、地元の朝鮮総連地方本部員から喫茶店に呼び出された。
 「『組織委託』をして組織で仕事をしないか」
 「いや僕は日本の大学へ行きたいのです」
 「大学なら働いた後に朝大へ行けばいい」
 「組織委託」とは、朝鮮総連に進路を全面的に委ねることを意味する。2、3年、朝鮮総連内の組織で働き、学費免除の「朝大給費生」となれば朝鮮総連幹部としてのエリートコースが約束される。

 だが、組織に必要以上に縛られたくなかった男性は申し出を断り、一般の朝大生として進学。卒業後、組織に残ったが、運営資金をめぐる幹部の不正に嫌気が差し、今は朝鮮総連とは距離を置いている。

 ただ、朝大や朝鮮学校への愛着だけは消えない。男性はこう断言する。

 「どんな悪でも、差別を受けても朝鮮学校に行けば『居場所』があった。学校だけは何とか残したい。そのためには朝鮮総連と手を切らねばならない」

□  ■  □

 朝鮮総連関係者によると、北朝鮮の初代権力者、金日成は朝鮮革命成就のため、拠点を北、世界、南(韓国)の3つに分類。在日朝鮮人を「南で革命を起こす一員」と位置づけ、日本人拉致を含むさまざまな工作を行った。だが、在日朝鮮人が3世、4世となった現在、革命に向けた貢献意識など、もはや皆無に等しい。その乖離を朝鮮総連や朝大は理解しないから、朝大の衰退に歯止めがかけられないのだ。

リ・ナナのペンネームで朝鮮学校時代の体験を綴る女性は、関西の朝高で学業優秀者や朝鮮総連幹部の子弟しか入れない「熱誠者学習班」のメンバーに選ばれながら、朝大へ進学しなかった。どうしても米国の大学へ行きたかったからだ。

 それでも朝鮮総連との関係は切れなかった。米国から帰国して日本の大学へ編入した際、留学同へ誘われた。「半ば自動的に加入させられた。ネットワークの力には抗えなかった」

 「ハングルを教える」と言って学生を誘い込み、親北思想を植え付ける-。そんな留学同の活動に嫌気が差したナナの心は、次第に朝鮮総連から離れていった。

 産経新聞の取材に応じた男性OBやナナは、朝鮮総連を頂点とする在日社会のエリート候補として活躍が期待されていたのに、いずれも組織に幻滅していった。彼らが離れざるを得なかった朝鮮総連と朝大の独善に衰退の根本原因があるようだ。(敬称略)

 この企画は喜多由浩、比護義則が担当しました。
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