移民問題、二つの進路 (上・下)「洗国」への道
■1.「洗国」
「洗国」という恐ろしい言葉があるのを知った。三橋貴明氏は近著『移民亡国論』で、こう説明している。
__________
洗国とは、支那大陸において、「他国」を乗っ取る際に多用される(多用された)手法である。まずは、国内の流民を数十万人規模で「対象国」に移住させる。当初は「外国人労働者」として、いずれは「移民」として、膨大な支那人を送り込み、現地に同化させていくのだ。・・・
いわば人口を利用した外国侵略だ。
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「今この瞬間も、チベットやウイグル(東トルキスタン)で行われているのが、まさにこの洗国なのである」と氏は指摘する。
チベットはヨーロッパに匹敵する面積の国土を持っていたが、第二次大戦後にシナに侵略され、600万の人口のうち120万人が殺され、今や750万人のシナ人が移住して多数派を占めている。
ウイグルもトルコ系民族の国だったが、第二次大戦後、やはりシナに併呑され、国土の一部は核実験場とされ、いまや2千万人の人口の41%はシナ人となっている[c]。ウイグル人の子供はシナに送られて洗脳され、女性もシナ沿岸部で漢族との婚姻を強いられている。ウイグル民族を漢族に同化吸収させる政策が取られている。
■2.「毎年20万人の外国人移民を受け入れる」
洗国の第一ステップ「国内の流民を数十万人規模で『対象国』に移住させる」と符合する動きが日本国内にある。平成26(2014)年3月に政府の経済財政諮問会議の「成長・発展ワーキング・グループ」が発表した「毎年20万人の外国人移民を受け入れる」という提言だ。
外国人と言っても、来るのはほとんどがシナ人である。「在日外国人」を国籍別に見ると、平成19(2007)年に韓国・朝鮮人を抜いてシナ人がトップに躍り出て、すでに70万人に達した。この上に毎年20万人も受け入れると、そのほとんどがシナ人となり、十数年のうちに3百万人規模となろう。
シナ人を3百万人規模で抱えた日本がどんな社会になるのか、欧米の移民先進国の実態を参考に考えてみよう。
■3.シナ人の「集住」する町
どこの国からの移民も固まって暮らす傾向が強い。世界中に広がっているチャイナ・タウンが良い例だ。これを「集住化」という。
日本国内に3百万人のシナ人が住むということは、大都市の一部、あるいはその周辺に、数万人から数十万人規模のチャイナ・タウンが数多くできる、という事である。すでにこの現象は起きている。
埼玉県南部には、住民の40パーセントがシナ人という団地がある。階段には汚物がまき散らされ、窓からは生ゴミが降ってくる。これはシナ人にとっては普通の生活スタイルだ。
カナダのバンクーバーは、人口210万人のうち約18パーセントがシナ系住民で、いまや香港にひっかけて「ホンクーバー」と呼ばれている。周辺のリッチモンド市にいたっては半数以上がシナ系で、街の看板もシナ語の方が英語より多い。シナ人は運転も荒く、交通事故は増加中。カードや紙幣の偽造事件も多発している。
日本でも集住地区では、小中学校にシナ人の生徒が多数通うようになり、学校によっては日本人生徒が少数派になる。シナ人生徒による日本人生徒へのいじめも多発するだろう。
ドイツの一部地域ではトルコ系移民が集住しており、外国人生徒が三分の一を超えると、クラスが「ひっくり返る」と言われている。言葉のハンディキャップや文化の違いで、クラス一体の授業がほとんど不可能になる。
こういう地域からは、日本人家庭はどんどん逃げ出す。しかし、逃げ出せない日本人家族はシナ人が支配する市内で、チベット人やウイグル人のように少数民族として、差別の下で生きていかねばならない。
■4.「税金泥棒」
日本語が自由に話せない多くのシナ移民の間では、当然、失業率が高まり、生活保護を求めるようになる。
__________
2009年8月には、門真市で所得を低く申告し、生活保護547万円を不正受給し、親に「仕送り」までしていた中国人夫婦が逮捕された。2013年1月には、大阪市で生活保護費を不正受給しつつ、なんと4100万円もの大金を貯蓄していた60代の中国人夫婦がやはり逮捕された。とはいえ、これらのケースは、しょせんは氷山の一角にすぎないのだろう。]
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「ホンクーバー」では「シナ移民は税金泥棒」との声があがっている。夫は中国で稼いでいるので所得税をカナダに納めないのに、母子と両親はカナダ暮らしで、カナダ国民として教育や医療を受けているからだ。
生活保護の不正受給は日本人の間にもあるが、シナ移民となると話が違ってくる。シナ移民が集住する地域では、彼らの票を目当てにシナ移民の便宜を図ろうとする市町村長や議員が増える。やがてはカリフォルニアのようにシナ系市長、シナ系議員まで生まれる。彼らは市町村役場の職員にも、シナ人を優先して採用する。
今日でも、いくつかの自治体で国籍条項がないために、在日の人間が福祉担当者となっているが、シナ系移民が簡単に国籍をとれるようになったら、大手を振って生活保護の不正支給が行われる恐れがある。
■5.無法シナ社会の出現
一般的に移民が集住する地域では、犯罪も多発する。シナでは犯罪を犯すと自転車泥棒でも死刑になったりするが、「人権社会」の日本では、たとえ捕まっても、冷暖房完備の留置所や刑務所で三食昼寝付きで遇され、病気や怪我もタダで治療してくれる。
不法滞在者が勤めるシナ料理店などでは、ケンカや傷害事件が発生しても、110番通報されることはまずない。店が不法就労者を雇っていて、警察に通報されたら、不法就労助長罪で店の方が危ないからだ。こういう地域ではシナ・マフィアが取り仕切る。こうして日本の警察も手が出せない無法シナ社会が出現する。
三橋氏の著書では、スウェーデンでは人口の約20%が中東などからの移民とその子孫であり、ストックホルム郊外には彼らが多数派を占めている街もある。そして約20%の移民がスウェーデンの犯罪の約45%を引き起こしているという。
5人に1人の移民が約45%の犯罪を行っているのに対して、残りの4人のスウェーデン人が55%、すなわち一人あたりでは14%分で、移民の犯罪率は3倍以上である。スウェーデンはスウェーデン人だけが住む豊かで安全な民族国家というイメージがあったが、その犯罪発生率は移民が押し上げて、日本の13倍にもなっている。
日本で犯罪を犯して検挙された人員の国籍別のデータを見ても、在日・来日合計のシナ人は約6千人で、日本人も含めた総人数の2%。シナ人はまだ人口では0.54%だから、人口当たりにすると日本人の4倍近い犯罪検挙率となり、スウェーデンと同様の傾向が見てとれる。
■6.シナ人の土木・建設会社で災害に対応できるのか
「毎年20万人の外国人移民を受け入れる」という提言の主目的は、労働力の不足を補うためだ。特に東日本大震災の復興需要や次期東京オリンピック関連工事で、土木・建築分野での労働力確保に向けて、外国からの技能実習生の受け入れ期間を3年から5年に延長する時限措置もとられた。
しかし、三橋氏が全国の建設業の経営者にインタビューすると、例外なく「外国人は難しい。理由は、危ないから」という答えが返ってきたという。危険な高所作業や重量物運搬の多い建設現場で、日本語がよく通じないシナ人労働者を数多く抱えては、日本人の現場監督たちは安全確保だけで一苦労だろう。
やや古いデータだが、1998年のシナでの「建設その他の産業」での災害件数は2万件以上、死亡者数は5,439人にのぼった[3]。わが国で、1件でも災害を起こすと、国土交通省から会社にペナルティが課される状況とは全く違うのである。
シナ人建設労働者をさらに大量に導入しようとすれば、現場監督者もシナ人にしなければならなくなる。そんな企業からは日本人監督者も労働者も逃げ出すだろう。こうしてドイツのように3K(きつい、汚い、危険)作業は外国人労働者がやるものとされ、日本人は敬遠するようになる。
平時はそれでも良いだろうが、いざ地震や台風などの災害時はどうなるのか。東日本大震災での原発事故の時には、東京都内にいた多くのシナ人、韓国人が姿を消した。彼らは生活のために日本に来ているのだから、日本と心中する気が無いのは当然である。
地震後の倒壊寸前の建物を解体撤去したり、台風の中を河川の氾濫を防ぐ、などの危険な作業をしてくれるのは、同胞を護ろうとする日本人ならではの仕事である。災害大国のわが国において、危険な作業から逃げ出してしまう恐れのあるシナ人中心の土木・建築会社だけになったら、日本国民の安全は護れるのか。
■7.シナ政府の指示で暴動が起こせる
危機の時に逃げ出すだけならまだしも、シナ人移民は危機を作り出す恐れもある。
平成20(2008)年の長野オリンピックで、3~4千人のシナ人留学生が集まって、巨大なシナ国旗を林立させた光景を覚えているだろう。その一部が暴徒化して、チベット・ウイグルを支援する日本人グループを襲撃し、数十人の日本人が負傷したと言われている。
シナ共産党政府は「外国に居住する中国人民」を含めたすべての人民を国防のために動員できる「国防動員法」を2010年に定めている。政府が動員令を発したら、成年男女はそれに従わねばならない。
この法律を運用する組織化も進んでいる。オーストラリアに政治亡命したシナの元外交官によれば、日本には数千人規模の工作員がおり、さらに彼らから金銭を受けとって工作に協力する者は、その数倍から10倍いる。日本の主要な大学では、シナ人留学生の組織が作られ、年に1~2回、東京のシナ大使館から幹部が派遣されて、指示を与えている。
シナ河南省にある日本向け技能実習生の職業訓練施設では、軍事教練が行われていることが写真入りでレポートされている。シナは技能実習制度を突破口に、軍事教練した「移民」を日本に送り込んでいるのである。
2012年、野田政権が尖閣諸島を国有化した際に、シナの各地で反日デモが起き、多くの日系企業が暴徒に襲われた。ある学校の男子学生全体にデモ参加が命じられた、とか、千円程度の日当を貰って参加した、という証言がなされている。シナ政府の工作であった事は間違いないだろう。
この時は、シナ政府は、デモが反政府暴動にまで広がることを恐れて、途中でストップをかけたようだが、同様の暴動を日本国内で起こす場合は、そんな心配は無用である。欧州各国で移民暴動は頻発しているが、それらはあくまで自然発生的である。しかし日本ではシナ政府の指示に従って、シナ移民が暴動を起こす危険がある。
■8.世界中の国が移民政策を見直しているなかで
わが国で移民受け入れ論が始まったのは1980年代からだが、その理由は次々に変わっていった。最初の「アジア諸国にも日本の繁栄を分かち与えなければならない」から、2009年頃には「人口減小時代に日本の活力を維持する」、そして2014年には「人口を100年後に1億人に維持するため」という珍妙な理由まで提唱された。
三橋氏は、理由が頻繁に変わる裏には、大っぴらには言えない真の理由があるからだ、と喝破する。それは「みなさんの給与引き上げを防ぐために外国人労働者を大々的に受け入れます」という本音だ。
移民労働力による低賃金を享受できるのは企業だけで、一般国民は賃金の低下を強いられるばかりか、上述のような移民社会のコストとリスクをすべて負わされる。
いまや世界中が移民政策を見直しつつある時代である。カナダは移民受け入れの条件を厳しくした。スウェーデンでも「スウェーデンをわれわれの手に取り戻そう」とのスローガンを掲げる民主党が勢力を伸ばしている。イギリスがEUからの離脱を決めた理由の一つが、無制限な移民流入にストップをかける事である。
EUの本家ドイツのメルケル首相ですら「(移民受入れの)多文化主義は完全に失敗した」と発言している。「メキシコ国境に壁を」というトランプ米共和党候補の強硬発言が一定の支持を受けているのも、不法移民が米国社会の大きな負担になっているからだ。
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あなたの周囲に移民賛成論者がいたら、こう聞いて欲しい。「移民政策がうまく行っている国があったら教えてくれ。移民政策で失敗して困っている国なら、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダなどいくらでも教えて上げるから」と。我が日本も、その一つになりつつある。
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と、かつて弊誌は書いた。これだけ世界中の国々が移民問題に悩まされているのに、いまだに「毎年20万人の受け入れを」などと言っている向きは、国民を犠牲にしても、産業界の私利私欲を追求する確信犯だとしか考えられない。
そして、もう一つ、忘れてならないのは、わが国が直面する移民問題とは、欧米諸国とは全く違った危険があることだ。それは十数億もの人口を持つ巨大な隣国が「洗国」の戦略をもって、わが国を狙っているという事である。
移民問題、二つの進路 (下)「大御宝」への道
■1.少子化の原因は未婚者の増加
前号[a]では「洗国」というシナの恐るべき戦略を紹介して、安易な移民受け入れが、国民生活にどのようなコストとリスクをもたらすかを考察した。
しかし、それだけでは移民受入れ論者の説得には不十分だ。彼らが「移民は必要」と主張する人口減少や労働力不足などの問題をどう解決するのかを、提案しなければならない。この問題を三橋貴明氏の『移民亡国論』[1]や政府の統計を参考に本号で考えてみよう。
まずは人口減少の問題を先に取り上げよう。人口減少が食い止められれば、そもそも労働力不足の問題も相当に緩和されるからだ。
人口減少の理由は、少子化、すなわち生まれる子供の数の減少である。昭和46(1971)年から3年間の第二次ベビーブームでは、出生数は年間200万人を超えていたが、昭和59(1984)年には150万人を割り込み、平成25(2013)年は約103万人まで落ち込んだ。
出生数の減少には、以下の二つの仮説が考えられる。
(1) 晩婚化、女性の職場進出などで既婚女性が産む子供数が減っている。
(2) 未婚の男女が増えている。
統計的に見れば、(1)ではなく、(2)が真の原因となっていることは明らかである。既婚女性が生む子供の数(有配偶出生率)は90年代に千人あたり66人と最低を記録したが、その後は緩やかに回復し、2010年代は79.4人と80年代をも上回っている。
(2)を未婚率で見ると、「30?34歳」男性の未婚率は1970年にはわずか11.7%だったのが、2010年には47.3%にもなっている。すなわち、1970年代には30代前半で独身だった男性は10人に一人強だったのが、今や半分近くにも達している。女性の未婚率も同様に上昇している。
すなわち未婚者が増えているから、子供の数も減っている、という、ごく当然の現象が起きているのだ。
■2.結婚したくともできない多くの成年男女がいる
未婚が増えた理由は種々考えられるが、有力な原因は実質賃金の低下や雇用の不安定である。厚生省の調査によると、現在の日本で約600万人の男性が年収200万円以下で暮らしているという。その多くはパート、アルバイト、派遣などで雇用自体が不安定だ。
女性では年収200万円以下は1180万人もいるが、パートタイムの主婦も相当含まれているので、以下、男性を対象に考える。
男性で月収十数万円、それもいつ失業するか分からない状況で、結婚して家庭を持とうとするのは難しい。未婚男性の約85%は「いずれ結婚するつもり」と答えながら、結婚への障害として挙げられているトップが「結婚資金」、2位が「結婚のための住居」である[3]。その結果が「30?34歳」男性で半数近くが未婚という結果なのである。
わが国は皇室が国民を「大御宝」と呼んで、その安寧を代々祈られてきた。そういう国で、結婚したくともできない多くの成年男女がいる、という事自体が大問題ではないか。
■3.「移民400万人」より「日本国民400万人出生増」
仮に、何らかの政策によって、これらの人々の所得を上げ、雇用が安定したとしよう。そして独身男性6百万人のうちの三分の一の2百万が結婚して、平均2人の子供を持ったとすると、4百万人の子供が生まれることになる。
4百万人の子供が増えたら、政府が受け入れようと提言した移民20万人の20年分に相当する。日本語もよく話せない、文化も習慣も異なる移民400万人と、日本で生まれ日本人として育った400万人のどちらが良いかは言うまでもない。
さらに大きな違いが、その裏にある。移民を受け入れれば、国内の賃金ベースがさらに下がり、雇用も不安定になるので、未婚率が今以上に悪化し、少子化が加速する。移民を増やした結果、日本人の少子化が進んだのでは、さらに移民を増やさなければない、という悪循環にはまることになる。
逆に、未婚率を下げることで出生数が増えれば、その出産、教育、結婚、家庭作りと、新たな消費需要が生まれ、経済発展の原動力となる。さらに彼らが成人して仕事につけば、税金を払って国家財政にも寄与する。まさに「子は国の宝」である。
多くの未婚者の生活水準をあげて、結婚できるようにすることで、善循環を生み出すことができる。どのように彼らの収入を上げるかは、後で考察しよう。
■4.子供を産みたくても産めない
経済的理由が少子化を招いている事を示唆するデータがまだある。
子供一人を持つ夫婦が、「もう一人子供が欲しい」という出産願望は、「25?29歳 89.8%」「30?34歳 79.0%」と非常に高い。すでに子供二人を持つ夫婦でも「もう一人欲しい」という夫婦は「25?29歳 47.5%」「30?34歳 28.3%」もいる。
しかし、実際の夫婦の出生児数は2人を割っている[4]。上記の強い出産願望と現実の出生数のギャップを見ると、子供を産みたいのに産めない、という夫婦が相当数いることが窺われる。理由はやはり経済的理由や住居の制約だろう。
弊誌633号「『明るい農村』はこう作る ? 長野県川上村の挑戦」では、「信州のチベット」と呼ばれていた寒村が、高級レタスの栽培で農家の平均年収が25百万円にもなり、東京から多くの女性も嫁いできて、平均出生率(一人の女性が一生に生む子どもの人数)は1.83と全国平均より0.5人も多い、という事例を紹介した。
産みたいのに産めない、という状況を示すもう一つのデータが、人工妊娠中絶である。近年は毎年20万件程度で推移しており、その理由の多くが「経済的理由」である。もちろん母体保護など別の理由もあるが、出産と育児・教育の負担を減らせば、せっかく授かった赤ちゃんを産めないという悲劇は大きく減らせるだろう。
わが国は経済大国といいながら、低収入から結婚できない、結婚しても子供を作れない、子供を授かっても産めない、という点で、経済力が国民の幸せに結びついていない面があり、その結果が少子化となっているようだ。こういう国民の不幸を差しおいて、移民による穴埋めを図ろうとするのは、政治として本末転倒ではないか。
■5.30万人の生活保護受給者を再教育する
次に、労働力不足の問題を考えてみよう。国内には、労働力として活躍できていない層がある。たとえば、30万人近くもいる「働けるにも関わらず、生活保護を受けている日本国民」。三橋氏は、こういう層をなぜ教育して、資格を取得させ、労働市場に送り出さないのか、と問う。
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労働市場から退出したままの「日本国民」を「人材」(即席であっても)に育成するためならば、それこそ政府はいくらお金を使っても構わない。
たとえば、働けるにもかかわらず生活保護を受けている30万人の「人材予備軍」に対し、1人100万円のコストをかけたとしても、「わずか」3000億円の支出ですむ。・・・
3000億円のコストで、即席ではあっても「人材」に成長した、あるいは人材に成長する可能性がある「日本語が堪能」でコミュニケーション上の問題も起きない「専門職30万人」を、需要が拡大している分野に送り出すことができるのだ。
仮に生活保護費用が、1人あたり平均月10万円だとすると、年間で120万円。人材育成に100万円を投じたとしても、それで彼らが職を得て、生活保護を脱することができれば、10ヶ月で回収できる。さらにこれらの人々の多くは税金を払うようにもなるだろう。
金銭的な問題だけでなく、人は誰でも世間のお荷物になるより、自分の力を十分に発揮して、世のため人のために貢献したいという気持をもっている。そういう充実感を30万人の人が味わえるようになるだけでも、大きな価値がある。
■6.高齢者の活躍
もう一つ、未開拓の人材のプールが高齢者層である。平成26(2014)年の日本人女性の平均寿命は86.83歳で3年連続世界一。男性は80.50歳で3位。長寿国として世界に誇れる記録である。我々の周囲には70代、80代で元気なご老人をよく見かける。
平成25(2013)年の統計では、65歳以上70歳未満の高齢者人口は869万人[5]。この大半は定年後で無職と思われるが、たとえば70歳まで働けるようにすれば、その半分のみが就業したとしても、やはり400万人以上が生産労働人口に加わる。
移民を毎年20万人、20年間受け入れるのと同数の労働力人口がすぐに生まれるのである。それも日本語に不自由しないだけでなく、人生経験も職業経験も豊かな人々なのだ。しかも高齢者が働ける環境を作れば、それだけ元気になって医療費も減るだろうし、年金の原資不足も緩和されるだろう。
現代医学の急速な進歩により、2045年には平均寿命は100歳に到達しているだろうと予測されている。そういう時代に60代半ばで定年退職して、あとは暇を持てあましつつ、年金暮らしをする、という事自体が、時代にあわなくなってきている。
弊誌926号「『寿命100歳』時代の生き方」でも紹介したように、高齢者の雇用を生み出す会社も健闘している[b]。我が国は高天原の神々でさえ、田畑を耕したり機織りをしたりして働いている。体が動く限りは働いて世の中のお役に立つことが幸せなのだ、というのが、我が国の労働観である。
高齢者が働ける環境作りを進めることは、国家にとっても、企業にとっても、そしてお年寄りの生き甲斐のためにも良い施策である。
■7.労働人口不足が呼んだ高度成長
以上は、人口減少を食い止め、生産年齢人口を増やすための余地がまだまだある事を示したが、それでもまだ人手不足の状態であったら、どうするのか、という反論が寄せられるかもしれない。
人手不足が日本経済の縮小をもたらすのだろうか。三橋氏はその可能性を明確に否定する。かつての高度経済成長時代は、人手不足の中で、いや、人手不足だったからこそ実現した、と氏は主張する。
昭和31(1956)年から48(1973)年までの20年近くもの間、日本のGDP(国内総生産)の平均実質成長率は9.22%にも達している。しかし、この間の生産年齢人口は平均で1.7%程度しか伸びていない。慢性的な人手不足で、地方の中学卒業生が都会に集団就職をして、「金の卵」と大切にされた時代だった。
人口が1.7%増えれば、それに伴い経済規模も1.7%は膨らむ。逆にいえば、9.22%の経済成長のうち、人口増による部分は1.7%に過ぎない。残りの7.5%はコンピュータ化、自動化などを含む一人あたりの生産性向上によるものである。高度成長期の民間企業設備投資は、実質年平均17.33%もの率で伸びていた。
人手不足だから、賃金が上昇する。企業は賃金上昇をカバーしようと、自動化設備やコンピュータ投資によって生産性を上げようとする。すると設備メーカーやコンピュータメーカーの売上げが増える。そしてそれらの企業に部品材料を売ったり、サービスを提供したりする企業も売上げが増大する。
一方、就業者の方は高い賃金を貰って、結婚して家や車、家電製品を買う。こうした生活水準の上昇によって、消費需要が増大する。それがまた人手不足を呼び、賃金を上げる。
人手不足が、生産性向上のための投資需要を呼び、賃金上昇によって消費需要も増やす。かつての高度成長は供給と需要が両輪となって、人も企業も、そして社会全体も豊かになっていったのである。これこそ国民を大御宝として、その安寧を実現する道だろう。
高度成長時代に「人手不足だから外国人労働力の導入を」という安易な逃げ道に行かなかったのは幸いだった。この時、外国人労働力を入れていれば、設備投資は冷え込んで投資需要は増えず、賃金は下降して消費需要も冷え込み、高度成長は腰砕けになっていただろう。
■8.「洗国」への道か、「大御宝」への道か
85%近くもの結婚願望を持つ青年が経済的制約に縛られずに結婚できる社会、2人、3人と子供を産みたい夫婦が自由に産める社会、そして70代、80代でも働きたい老人が働ける社会。それが国民を大御宝として大切にする国のあり方だろう。
労働移民により人件費を安くして企業の利益を上げたいという近視眼的な政策だけでは、どういう国家を作りたいのか、という国家観が全く見えない。多くの国々の移民導入失敗から見れば、その道は移民による無法地帯を作り、国民の安定した生活を破壊する道だ。わが国では、さらにシナの「洗国」工作に乗ぜられる危険も大きい。
外国人労働者を入れるかどうか、というのは、短期的な政策的選択の問題ではなく、長期的にどういう国家をめざすのか、という次元で考えなければならない。企業の目先の利益だけでなく、国民が労働者として、消費者として、そして生活者として、物言いをすべき問題なのである。
(文責:伊勢雅臣)
「洗国」という恐ろしい言葉があるのを知った。三橋貴明氏は近著『移民亡国論』で、こう説明している。
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洗国とは、支那大陸において、「他国」を乗っ取る際に多用される(多用された)手法である。まずは、国内の流民を数十万人規模で「対象国」に移住させる。当初は「外国人労働者」として、いずれは「移民」として、膨大な支那人を送り込み、現地に同化させていくのだ。・・・
いわば人口を利用した外国侵略だ。
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「今この瞬間も、チベットやウイグル(東トルキスタン)で行われているのが、まさにこの洗国なのである」と氏は指摘する。
チベットはヨーロッパに匹敵する面積の国土を持っていたが、第二次大戦後にシナに侵略され、600万の人口のうち120万人が殺され、今や750万人のシナ人が移住して多数派を占めている。
ウイグルもトルコ系民族の国だったが、第二次大戦後、やはりシナに併呑され、国土の一部は核実験場とされ、いまや2千万人の人口の41%はシナ人となっている[c]。ウイグル人の子供はシナに送られて洗脳され、女性もシナ沿岸部で漢族との婚姻を強いられている。ウイグル民族を漢族に同化吸収させる政策が取られている。
■2.「毎年20万人の外国人移民を受け入れる」
洗国の第一ステップ「国内の流民を数十万人規模で『対象国』に移住させる」と符合する動きが日本国内にある。平成26(2014)年3月に政府の経済財政諮問会議の「成長・発展ワーキング・グループ」が発表した「毎年20万人の外国人移民を受け入れる」という提言だ。
外国人と言っても、来るのはほとんどがシナ人である。「在日外国人」を国籍別に見ると、平成19(2007)年に韓国・朝鮮人を抜いてシナ人がトップに躍り出て、すでに70万人に達した。この上に毎年20万人も受け入れると、そのほとんどがシナ人となり、十数年のうちに3百万人規模となろう。
シナ人を3百万人規模で抱えた日本がどんな社会になるのか、欧米の移民先進国の実態を参考に考えてみよう。
■3.シナ人の「集住」する町
どこの国からの移民も固まって暮らす傾向が強い。世界中に広がっているチャイナ・タウンが良い例だ。これを「集住化」という。
日本国内に3百万人のシナ人が住むということは、大都市の一部、あるいはその周辺に、数万人から数十万人規模のチャイナ・タウンが数多くできる、という事である。すでにこの現象は起きている。
埼玉県南部には、住民の40パーセントがシナ人という団地がある。階段には汚物がまき散らされ、窓からは生ゴミが降ってくる。これはシナ人にとっては普通の生活スタイルだ。
カナダのバンクーバーは、人口210万人のうち約18パーセントがシナ系住民で、いまや香港にひっかけて「ホンクーバー」と呼ばれている。周辺のリッチモンド市にいたっては半数以上がシナ系で、街の看板もシナ語の方が英語より多い。シナ人は運転も荒く、交通事故は増加中。カードや紙幣の偽造事件も多発している。
日本でも集住地区では、小中学校にシナ人の生徒が多数通うようになり、学校によっては日本人生徒が少数派になる。シナ人生徒による日本人生徒へのいじめも多発するだろう。
ドイツの一部地域ではトルコ系移民が集住しており、外国人生徒が三分の一を超えると、クラスが「ひっくり返る」と言われている。言葉のハンディキャップや文化の違いで、クラス一体の授業がほとんど不可能になる。
こういう地域からは、日本人家庭はどんどん逃げ出す。しかし、逃げ出せない日本人家族はシナ人が支配する市内で、チベット人やウイグル人のように少数民族として、差別の下で生きていかねばならない。
■4.「税金泥棒」
日本語が自由に話せない多くのシナ移民の間では、当然、失業率が高まり、生活保護を求めるようになる。
__________
2009年8月には、門真市で所得を低く申告し、生活保護547万円を不正受給し、親に「仕送り」までしていた中国人夫婦が逮捕された。2013年1月には、大阪市で生活保護費を不正受給しつつ、なんと4100万円もの大金を貯蓄していた60代の中国人夫婦がやはり逮捕された。とはいえ、これらのケースは、しょせんは氷山の一角にすぎないのだろう。]
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「ホンクーバー」では「シナ移民は税金泥棒」との声があがっている。夫は中国で稼いでいるので所得税をカナダに納めないのに、母子と両親はカナダ暮らしで、カナダ国民として教育や医療を受けているからだ。
生活保護の不正受給は日本人の間にもあるが、シナ移民となると話が違ってくる。シナ移民が集住する地域では、彼らの票を目当てにシナ移民の便宜を図ろうとする市町村長や議員が増える。やがてはカリフォルニアのようにシナ系市長、シナ系議員まで生まれる。彼らは市町村役場の職員にも、シナ人を優先して採用する。
今日でも、いくつかの自治体で国籍条項がないために、在日の人間が福祉担当者となっているが、シナ系移民が簡単に国籍をとれるようになったら、大手を振って生活保護の不正支給が行われる恐れがある。
■5.無法シナ社会の出現
一般的に移民が集住する地域では、犯罪も多発する。シナでは犯罪を犯すと自転車泥棒でも死刑になったりするが、「人権社会」の日本では、たとえ捕まっても、冷暖房完備の留置所や刑務所で三食昼寝付きで遇され、病気や怪我もタダで治療してくれる。
不法滞在者が勤めるシナ料理店などでは、ケンカや傷害事件が発生しても、110番通報されることはまずない。店が不法就労者を雇っていて、警察に通報されたら、不法就労助長罪で店の方が危ないからだ。こういう地域ではシナ・マフィアが取り仕切る。こうして日本の警察も手が出せない無法シナ社会が出現する。
三橋氏の著書では、スウェーデンでは人口の約20%が中東などからの移民とその子孫であり、ストックホルム郊外には彼らが多数派を占めている街もある。そして約20%の移民がスウェーデンの犯罪の約45%を引き起こしているという。
5人に1人の移民が約45%の犯罪を行っているのに対して、残りの4人のスウェーデン人が55%、すなわち一人あたりでは14%分で、移民の犯罪率は3倍以上である。スウェーデンはスウェーデン人だけが住む豊かで安全な民族国家というイメージがあったが、その犯罪発生率は移民が押し上げて、日本の13倍にもなっている。
日本で犯罪を犯して検挙された人員の国籍別のデータを見ても、在日・来日合計のシナ人は約6千人で、日本人も含めた総人数の2%。シナ人はまだ人口では0.54%だから、人口当たりにすると日本人の4倍近い犯罪検挙率となり、スウェーデンと同様の傾向が見てとれる。
■6.シナ人の土木・建設会社で災害に対応できるのか
「毎年20万人の外国人移民を受け入れる」という提言の主目的は、労働力の不足を補うためだ。特に東日本大震災の復興需要や次期東京オリンピック関連工事で、土木・建築分野での労働力確保に向けて、外国からの技能実習生の受け入れ期間を3年から5年に延長する時限措置もとられた。
しかし、三橋氏が全国の建設業の経営者にインタビューすると、例外なく「外国人は難しい。理由は、危ないから」という答えが返ってきたという。危険な高所作業や重量物運搬の多い建設現場で、日本語がよく通じないシナ人労働者を数多く抱えては、日本人の現場監督たちは安全確保だけで一苦労だろう。
やや古いデータだが、1998年のシナでの「建設その他の産業」での災害件数は2万件以上、死亡者数は5,439人にのぼった[3]。わが国で、1件でも災害を起こすと、国土交通省から会社にペナルティが課される状況とは全く違うのである。
シナ人建設労働者をさらに大量に導入しようとすれば、現場監督者もシナ人にしなければならなくなる。そんな企業からは日本人監督者も労働者も逃げ出すだろう。こうしてドイツのように3K(きつい、汚い、危険)作業は外国人労働者がやるものとされ、日本人は敬遠するようになる。
平時はそれでも良いだろうが、いざ地震や台風などの災害時はどうなるのか。東日本大震災での原発事故の時には、東京都内にいた多くのシナ人、韓国人が姿を消した。彼らは生活のために日本に来ているのだから、日本と心中する気が無いのは当然である。
地震後の倒壊寸前の建物を解体撤去したり、台風の中を河川の氾濫を防ぐ、などの危険な作業をしてくれるのは、同胞を護ろうとする日本人ならではの仕事である。災害大国のわが国において、危険な作業から逃げ出してしまう恐れのあるシナ人中心の土木・建築会社だけになったら、日本国民の安全は護れるのか。
■7.シナ政府の指示で暴動が起こせる
危機の時に逃げ出すだけならまだしも、シナ人移民は危機を作り出す恐れもある。
平成20(2008)年の長野オリンピックで、3~4千人のシナ人留学生が集まって、巨大なシナ国旗を林立させた光景を覚えているだろう。その一部が暴徒化して、チベット・ウイグルを支援する日本人グループを襲撃し、数十人の日本人が負傷したと言われている。
シナ共産党政府は「外国に居住する中国人民」を含めたすべての人民を国防のために動員できる「国防動員法」を2010年に定めている。政府が動員令を発したら、成年男女はそれに従わねばならない。
この法律を運用する組織化も進んでいる。オーストラリアに政治亡命したシナの元外交官によれば、日本には数千人規模の工作員がおり、さらに彼らから金銭を受けとって工作に協力する者は、その数倍から10倍いる。日本の主要な大学では、シナ人留学生の組織が作られ、年に1~2回、東京のシナ大使館から幹部が派遣されて、指示を与えている。
シナ河南省にある日本向け技能実習生の職業訓練施設では、軍事教練が行われていることが写真入りでレポートされている。シナは技能実習制度を突破口に、軍事教練した「移民」を日本に送り込んでいるのである。
2012年、野田政権が尖閣諸島を国有化した際に、シナの各地で反日デモが起き、多くの日系企業が暴徒に襲われた。ある学校の男子学生全体にデモ参加が命じられた、とか、千円程度の日当を貰って参加した、という証言がなされている。シナ政府の工作であった事は間違いないだろう。
この時は、シナ政府は、デモが反政府暴動にまで広がることを恐れて、途中でストップをかけたようだが、同様の暴動を日本国内で起こす場合は、そんな心配は無用である。欧州各国で移民暴動は頻発しているが、それらはあくまで自然発生的である。しかし日本ではシナ政府の指示に従って、シナ移民が暴動を起こす危険がある。
■8.世界中の国が移民政策を見直しているなかで
わが国で移民受け入れ論が始まったのは1980年代からだが、その理由は次々に変わっていった。最初の「アジア諸国にも日本の繁栄を分かち与えなければならない」から、2009年頃には「人口減小時代に日本の活力を維持する」、そして2014年には「人口を100年後に1億人に維持するため」という珍妙な理由まで提唱された。
三橋氏は、理由が頻繁に変わる裏には、大っぴらには言えない真の理由があるからだ、と喝破する。それは「みなさんの給与引き上げを防ぐために外国人労働者を大々的に受け入れます」という本音だ。
移民労働力による低賃金を享受できるのは企業だけで、一般国民は賃金の低下を強いられるばかりか、上述のような移民社会のコストとリスクをすべて負わされる。
いまや世界中が移民政策を見直しつつある時代である。カナダは移民受け入れの条件を厳しくした。スウェーデンでも「スウェーデンをわれわれの手に取り戻そう」とのスローガンを掲げる民主党が勢力を伸ばしている。イギリスがEUからの離脱を決めた理由の一つが、無制限な移民流入にストップをかける事である。
EUの本家ドイツのメルケル首相ですら「(移民受入れの)多文化主義は完全に失敗した」と発言している。「メキシコ国境に壁を」というトランプ米共和党候補の強硬発言が一定の支持を受けているのも、不法移民が米国社会の大きな負担になっているからだ。
__________
あなたの周囲に移民賛成論者がいたら、こう聞いて欲しい。「移民政策がうまく行っている国があったら教えてくれ。移民政策で失敗して困っている国なら、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダなどいくらでも教えて上げるから」と。我が日本も、その一つになりつつある。
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と、かつて弊誌は書いた。これだけ世界中の国々が移民問題に悩まされているのに、いまだに「毎年20万人の受け入れを」などと言っている向きは、国民を犠牲にしても、産業界の私利私欲を追求する確信犯だとしか考えられない。
そして、もう一つ、忘れてならないのは、わが国が直面する移民問題とは、欧米諸国とは全く違った危険があることだ。それは十数億もの人口を持つ巨大な隣国が「洗国」の戦略をもって、わが国を狙っているという事である。
移民問題、二つの進路 (下)「大御宝」への道
■1.少子化の原因は未婚者の増加
前号[a]では「洗国」というシナの恐るべき戦略を紹介して、安易な移民受け入れが、国民生活にどのようなコストとリスクをもたらすかを考察した。
しかし、それだけでは移民受入れ論者の説得には不十分だ。彼らが「移民は必要」と主張する人口減少や労働力不足などの問題をどう解決するのかを、提案しなければならない。この問題を三橋貴明氏の『移民亡国論』[1]や政府の統計を参考に本号で考えてみよう。
まずは人口減少の問題を先に取り上げよう。人口減少が食い止められれば、そもそも労働力不足の問題も相当に緩和されるからだ。
人口減少の理由は、少子化、すなわち生まれる子供の数の減少である。昭和46(1971)年から3年間の第二次ベビーブームでは、出生数は年間200万人を超えていたが、昭和59(1984)年には150万人を割り込み、平成25(2013)年は約103万人まで落ち込んだ。
出生数の減少には、以下の二つの仮説が考えられる。
(1) 晩婚化、女性の職場進出などで既婚女性が産む子供数が減っている。
(2) 未婚の男女が増えている。
統計的に見れば、(1)ではなく、(2)が真の原因となっていることは明らかである。既婚女性が生む子供の数(有配偶出生率)は90年代に千人あたり66人と最低を記録したが、その後は緩やかに回復し、2010年代は79.4人と80年代をも上回っている。
(2)を未婚率で見ると、「30?34歳」男性の未婚率は1970年にはわずか11.7%だったのが、2010年には47.3%にもなっている。すなわち、1970年代には30代前半で独身だった男性は10人に一人強だったのが、今や半分近くにも達している。女性の未婚率も同様に上昇している。
すなわち未婚者が増えているから、子供の数も減っている、という、ごく当然の現象が起きているのだ。
■2.結婚したくともできない多くの成年男女がいる
未婚が増えた理由は種々考えられるが、有力な原因は実質賃金の低下や雇用の不安定である。厚生省の調査によると、現在の日本で約600万人の男性が年収200万円以下で暮らしているという。その多くはパート、アルバイト、派遣などで雇用自体が不安定だ。
女性では年収200万円以下は1180万人もいるが、パートタイムの主婦も相当含まれているので、以下、男性を対象に考える。
男性で月収十数万円、それもいつ失業するか分からない状況で、結婚して家庭を持とうとするのは難しい。未婚男性の約85%は「いずれ結婚するつもり」と答えながら、結婚への障害として挙げられているトップが「結婚資金」、2位が「結婚のための住居」である[3]。その結果が「30?34歳」男性で半数近くが未婚という結果なのである。
わが国は皇室が国民を「大御宝」と呼んで、その安寧を代々祈られてきた。そういう国で、結婚したくともできない多くの成年男女がいる、という事自体が大問題ではないか。
■3.「移民400万人」より「日本国民400万人出生増」
仮に、何らかの政策によって、これらの人々の所得を上げ、雇用が安定したとしよう。そして独身男性6百万人のうちの三分の一の2百万が結婚して、平均2人の子供を持ったとすると、4百万人の子供が生まれることになる。
4百万人の子供が増えたら、政府が受け入れようと提言した移民20万人の20年分に相当する。日本語もよく話せない、文化も習慣も異なる移民400万人と、日本で生まれ日本人として育った400万人のどちらが良いかは言うまでもない。
さらに大きな違いが、その裏にある。移民を受け入れれば、国内の賃金ベースがさらに下がり、雇用も不安定になるので、未婚率が今以上に悪化し、少子化が加速する。移民を増やした結果、日本人の少子化が進んだのでは、さらに移民を増やさなければない、という悪循環にはまることになる。
逆に、未婚率を下げることで出生数が増えれば、その出産、教育、結婚、家庭作りと、新たな消費需要が生まれ、経済発展の原動力となる。さらに彼らが成人して仕事につけば、税金を払って国家財政にも寄与する。まさに「子は国の宝」である。
多くの未婚者の生活水準をあげて、結婚できるようにすることで、善循環を生み出すことができる。どのように彼らの収入を上げるかは、後で考察しよう。
■4.子供を産みたくても産めない
経済的理由が少子化を招いている事を示唆するデータがまだある。
子供一人を持つ夫婦が、「もう一人子供が欲しい」という出産願望は、「25?29歳 89.8%」「30?34歳 79.0%」と非常に高い。すでに子供二人を持つ夫婦でも「もう一人欲しい」という夫婦は「25?29歳 47.5%」「30?34歳 28.3%」もいる。
しかし、実際の夫婦の出生児数は2人を割っている[4]。上記の強い出産願望と現実の出生数のギャップを見ると、子供を産みたいのに産めない、という夫婦が相当数いることが窺われる。理由はやはり経済的理由や住居の制約だろう。
弊誌633号「『明るい農村』はこう作る ? 長野県川上村の挑戦」では、「信州のチベット」と呼ばれていた寒村が、高級レタスの栽培で農家の平均年収が25百万円にもなり、東京から多くの女性も嫁いできて、平均出生率(一人の女性が一生に生む子どもの人数)は1.83と全国平均より0.5人も多い、という事例を紹介した。
産みたいのに産めない、という状況を示すもう一つのデータが、人工妊娠中絶である。近年は毎年20万件程度で推移しており、その理由の多くが「経済的理由」である。もちろん母体保護など別の理由もあるが、出産と育児・教育の負担を減らせば、せっかく授かった赤ちゃんを産めないという悲劇は大きく減らせるだろう。
わが国は経済大国といいながら、低収入から結婚できない、結婚しても子供を作れない、子供を授かっても産めない、という点で、経済力が国民の幸せに結びついていない面があり、その結果が少子化となっているようだ。こういう国民の不幸を差しおいて、移民による穴埋めを図ろうとするのは、政治として本末転倒ではないか。
■5.30万人の生活保護受給者を再教育する
次に、労働力不足の問題を考えてみよう。国内には、労働力として活躍できていない層がある。たとえば、30万人近くもいる「働けるにも関わらず、生活保護を受けている日本国民」。三橋氏は、こういう層をなぜ教育して、資格を取得させ、労働市場に送り出さないのか、と問う。
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労働市場から退出したままの「日本国民」を「人材」(即席であっても)に育成するためならば、それこそ政府はいくらお金を使っても構わない。
たとえば、働けるにもかかわらず生活保護を受けている30万人の「人材予備軍」に対し、1人100万円のコストをかけたとしても、「わずか」3000億円の支出ですむ。・・・
3000億円のコストで、即席ではあっても「人材」に成長した、あるいは人材に成長する可能性がある「日本語が堪能」でコミュニケーション上の問題も起きない「専門職30万人」を、需要が拡大している分野に送り出すことができるのだ。
仮に生活保護費用が、1人あたり平均月10万円だとすると、年間で120万円。人材育成に100万円を投じたとしても、それで彼らが職を得て、生活保護を脱することができれば、10ヶ月で回収できる。さらにこれらの人々の多くは税金を払うようにもなるだろう。
金銭的な問題だけでなく、人は誰でも世間のお荷物になるより、自分の力を十分に発揮して、世のため人のために貢献したいという気持をもっている。そういう充実感を30万人の人が味わえるようになるだけでも、大きな価値がある。
■6.高齢者の活躍
もう一つ、未開拓の人材のプールが高齢者層である。平成26(2014)年の日本人女性の平均寿命は86.83歳で3年連続世界一。男性は80.50歳で3位。長寿国として世界に誇れる記録である。我々の周囲には70代、80代で元気なご老人をよく見かける。
平成25(2013)年の統計では、65歳以上70歳未満の高齢者人口は869万人[5]。この大半は定年後で無職と思われるが、たとえば70歳まで働けるようにすれば、その半分のみが就業したとしても、やはり400万人以上が生産労働人口に加わる。
移民を毎年20万人、20年間受け入れるのと同数の労働力人口がすぐに生まれるのである。それも日本語に不自由しないだけでなく、人生経験も職業経験も豊かな人々なのだ。しかも高齢者が働ける環境を作れば、それだけ元気になって医療費も減るだろうし、年金の原資不足も緩和されるだろう。
現代医学の急速な進歩により、2045年には平均寿命は100歳に到達しているだろうと予測されている。そういう時代に60代半ばで定年退職して、あとは暇を持てあましつつ、年金暮らしをする、という事自体が、時代にあわなくなってきている。
弊誌926号「『寿命100歳』時代の生き方」でも紹介したように、高齢者の雇用を生み出す会社も健闘している[b]。我が国は高天原の神々でさえ、田畑を耕したり機織りをしたりして働いている。体が動く限りは働いて世の中のお役に立つことが幸せなのだ、というのが、我が国の労働観である。
高齢者が働ける環境作りを進めることは、国家にとっても、企業にとっても、そしてお年寄りの生き甲斐のためにも良い施策である。
■7.労働人口不足が呼んだ高度成長
以上は、人口減少を食い止め、生産年齢人口を増やすための余地がまだまだある事を示したが、それでもまだ人手不足の状態であったら、どうするのか、という反論が寄せられるかもしれない。
人手不足が日本経済の縮小をもたらすのだろうか。三橋氏はその可能性を明確に否定する。かつての高度経済成長時代は、人手不足の中で、いや、人手不足だったからこそ実現した、と氏は主張する。
昭和31(1956)年から48(1973)年までの20年近くもの間、日本のGDP(国内総生産)の平均実質成長率は9.22%にも達している。しかし、この間の生産年齢人口は平均で1.7%程度しか伸びていない。慢性的な人手不足で、地方の中学卒業生が都会に集団就職をして、「金の卵」と大切にされた時代だった。
人口が1.7%増えれば、それに伴い経済規模も1.7%は膨らむ。逆にいえば、9.22%の経済成長のうち、人口増による部分は1.7%に過ぎない。残りの7.5%はコンピュータ化、自動化などを含む一人あたりの生産性向上によるものである。高度成長期の民間企業設備投資は、実質年平均17.33%もの率で伸びていた。
人手不足だから、賃金が上昇する。企業は賃金上昇をカバーしようと、自動化設備やコンピュータ投資によって生産性を上げようとする。すると設備メーカーやコンピュータメーカーの売上げが増える。そしてそれらの企業に部品材料を売ったり、サービスを提供したりする企業も売上げが増大する。
一方、就業者の方は高い賃金を貰って、結婚して家や車、家電製品を買う。こうした生活水準の上昇によって、消費需要が増大する。それがまた人手不足を呼び、賃金を上げる。
人手不足が、生産性向上のための投資需要を呼び、賃金上昇によって消費需要も増やす。かつての高度成長は供給と需要が両輪となって、人も企業も、そして社会全体も豊かになっていったのである。これこそ国民を大御宝として、その安寧を実現する道だろう。
高度成長時代に「人手不足だから外国人労働力の導入を」という安易な逃げ道に行かなかったのは幸いだった。この時、外国人労働力を入れていれば、設備投資は冷え込んで投資需要は増えず、賃金は下降して消費需要も冷え込み、高度成長は腰砕けになっていただろう。
■8.「洗国」への道か、「大御宝」への道か
85%近くもの結婚願望を持つ青年が経済的制約に縛られずに結婚できる社会、2人、3人と子供を産みたい夫婦が自由に産める社会、そして70代、80代でも働きたい老人が働ける社会。それが国民を大御宝として大切にする国のあり方だろう。
労働移民により人件費を安くして企業の利益を上げたいという近視眼的な政策だけでは、どういう国家を作りたいのか、という国家観が全く見えない。多くの国々の移民導入失敗から見れば、その道は移民による無法地帯を作り、国民の安定した生活を破壊する道だ。わが国では、さらにシナの「洗国」工作に乗ぜられる危険も大きい。
外国人労働者を入れるかどうか、というのは、短期的な政策的選択の問題ではなく、長期的にどういう国家をめざすのか、という次元で考えなければならない。企業の目先の利益だけでなく、国民が労働者として、消費者として、そして生活者として、物言いをすべき問題なのである。
(文責:伊勢雅臣)
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